本書のタイトルに目がとまり、読んでみました。
年金については社労士試験を通じてそれなりに勉強しましたが、あくまでも試験対策上の勉強に特化していたため、本書のような角度を変えた切り口からであれば、新たな年金の知識が得られるのではないかと思ったのがきっかけです。
著者は雇用ジャーナリストである海老原嗣生氏です。
以下にて本書の感想をお伝えします。
ご参考にどうぞ!
章立て
- 年金制度の本当の問題とは
- 積立方式では解決しない
- 厚労省が悪い、では解決しない
- 「年金は欲しいが高負担はいや」という世論
- ウソや大げさで危機を煽った戦犯たち
- ベーシック・インカムの現実度
- 昨今繰り広げられた、対立的な政治風景
- もっと本気で高負担社会
- 空気と水と平和と福祉
感想
著者は過去を振り返り、年金や消費税が政治のネタにされ続けてきたことを指摘しています。
そして、その度にまともな議論がされず、問題の本質からずれた論点での争いごとを重ねた結果、今の日本(制度)が出来上がってしまったといった嘆きが本書から見て取れます。
なにより、政治家やメディアは印象操作によって国民を煽り、自分たちの都合のよい論理で世論をつくり上げていく手法はひどいと思う反面、私を含めてクリティカルな目線を持っていない国民にも問題があると思いました…。
本書は少し前に大きな話題となった「老後2,000万円問題」にも触れています。
そもそも論として、年金は老後の生活を下支えするものであり、それだけで生活費をすべて賄うことを想定して創設されていません。
また、年金は救貧ではなく防貧です。
そのような点を度外視すると同時に、国民感情を煽ることができるような部分のみを切り出して、年金制度や現政権を批判している政治家やメディアには呆れてしまいますね。
著者は「年金未納問題」でも同様の指摘をされています。
年金未納者の定義付けを飛ばして、40%超が未納といった目立つ数字に焦点を当てて、問題を提起する様はある意味では見事ですね。
その辺も丁寧に解説されています。
政治家やメディアは単なる知識(勉強)不足ではなく、耳目を集めるべく意図的に行っていると思いますが。
その他本書を通じて、マクロ経済スライドや年金の賦課方式と積立方式の仕組みについて改めて学び直すことができました。
それぞれにおいて、現状の仕組みに至るまでの過程から解説されているため、現行の仕組みの良さが浮かび上がるように理解できました。
この点は特に大きな収穫でした。
本書全体にわたってになりますが、政治家や評論家、メディアの欺瞞をあばいていく展開も非常に参考になりました。
切れ味鋭い表現でしたし(笑)
また、いかに現行の年金制度がベターであるかについても理解することができましたね。
私も年金制度については知識不足が故に偏った見方をしており、ある意味では政治家やメディアに洗脳されていたのかもしれません…。
本書を通じて気づかされました。
最後に、著者は年金問題の根源は「日本人の心にある」と指南しています。
本書全体を読んでみるとその意味が分かると思います。
そして、その意味するところは、今後も中長期的に非常に大事になってくる視点であると感じました。