銀行を舞台としたストーリーということで、本書を読んでみました。
著者は共同通信社の記者として、メガバンクや中央省庁などを担当したほか、日銀キャップであったことから、銀行の内部事情には詳しいと思われます。
以下にて本書の感想をお伝えします。
感想
本書は、銀行の広報部長が主人公であり、タイトルにあるとおり「メガバンクの人事抗争」を軸とした展開になっています。
全体としては読みやすい分、個人的には「半沢直樹シリーズ」と比較すると物足りなさがありました。
意外性があまりなく、なんとなく先の展開が見えてしまう仕立てになっていたためです。
この点については、私が元銀行員であったためかもしれません…。
ですが、銀行のトップ人事が薄汚い形で描かれている様は人間味があって面白いと思いました。
また、大手銀行ならではの旧行意識やたすき掛け人事はリアルでしたね。
メガバンクを担当したり、日銀キャップであった著者だからこそ、うまく描けているような気がしました。
現在の大手銀行においては、表立って旧行意識やたすき掛け人事はなく、実力本位の配置と主張していますが、本当のところはわかりません。
実際に銀行員であった私としても、その辺りには疑問符がつきますね…。
なにより、本書を読むことで、総じて銀行員のイメージは悪くなると思います(笑)
銀行員というサラリーマンの出世の仕組みなど、人事制度が機能不全に陥っているように描かれていますので。
また、フィクションということもあり、若干過度な展開や表現があるものの、意外とその通りだと思う点も多かったのは事実であり、銀行のドロドロとした内部事情を知ることもできます。
いかにドロドロとして環境で生き抜き、出世していくかについて描かれているので、銀行員だけでなく、一般的なサラリーマンの処世術としても気づきや学びが得られるかもしれません。
蛇足にはなりますが、業種業界問わず、サラリーマン自体、出世するためには大なり小なりその組織に適した処世術に長けておく必要がある思いますので、処世術としてどのようなスタイルや手法があるかは知っておいて損はないと思います。
ですので、本書はその一助になるかもしれません。
サラリーマンとしての出世を望むことが前提ですが。
最後に、本書にて使われている銀行を表現する象徴的な表現は以下のとおりです。
「部下の手柄は上司の手柄。上司の失敗は部下の失敗。ただし、心配する必要はない。君も君の部下に同じようにやればよい。これが銀行だ。」
これは非常に含蓄のある表現だと感じました。
これをどのように捉えるかはその人次第ですが、銀行員であれば立ち止まって考えさせられる表現ではないかと思います。