令和3年3月1日より、障害者の法定雇用率が引き上げになります。
この法改正は社労士試験としても狙われやすいですし、企業(経営者)としても重要だと思います。
そこで今回は障害者の法定雇用率とその法改正内容についてお伝えします。
ご参考にどうぞ!
障害者雇用率制度とは?
「障害に関係なく、希望や能力に応じて、誰もが職業を通じた社会参加のできる「共生社会」実現の理念の下、すべての事業主には、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務がある。」と規定されています。
※障害者雇用促進法43条第1項
対象となる障害者とは?
民間企業、国、地方公共団体は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、それぞれ以下の割合(法定雇用率)に相当する数以上の障害者を雇用しなければならないこととされています。
雇用義務の対象となる障害者は、以下のとおりです。
- 身体障害者
- 知的障害者
- 精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者に限る。)
法定雇用率と法改正内容
◆法定雇用率
事業主区分 | 現行 | 令和3年3月1日以降 |
民間企業 | 2.2% | 2.3% |
国、地方公共団体等 | 2.5% | 2.6% |
都道府県等の教育委員会 | 2.4% | 2.5% |
※特殊法人、国及び地方公共団体における障害者雇用率は、一般の民間企業の障害者雇用率を下回らない率をもって定めることとされています。
※重度身体障害者又は重度知的障害者については、その1人の雇用をもって、2人の身体障害者又は知的障害者を雇用しているものとしてカウントされます。
※ 重度身体障害者又は重度知的障害者である短時間労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者)については、1人分として、重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者については、0.5人分としてカウントされます。
※ただし、精神障害者である短時間労働者であっても、次のいずれかに該当する者については、1人分としてカウントされます。
- 通報年の3年前の年に属する6月2日以降に採用された者であること。
- 通報年の3年前の年に属する6月2日より前に採用された者で、同日以後に精神障害者保健福祉手帳を取得した者であること。
また、今回の法定雇用率の変更に伴い、障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲が以下のとおり変更になります。
なお、その事業主には以下の義務があります。
- 毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告。
- 障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」を選任するよう努めなければなりません。
社労士試験としては、この「障害者雇用推進者」の選任が努力義務とされていることは押さえておきたい点ですね。
引用元:https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000761619.pdf
障害者雇用状況の集計結果(令和元年)
以下は、昨年の12月25日付の厚生労働省のプレスリリースにて公表されたデータになります。
集計結果としては、毎年6月1日現在の身体障害者、知的障害者、精神障害者の雇用状況について、障害者の雇用義務のある事業主などに報告を求め、それを集計したものになっています。
民間企業
雇用障害者数 | 56万608.5人 | 対前年比+4.8% |
実雇用率 | 2.11% | 対前年比+0.06% |
法定雇用率達成企業 | 48.0% | 対前年比+2.1% |
雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新しています。
※法定雇用率は2.2%
公的機関
◆雇用障害者数
国 | 7,577.0人 | (前年)3,902.5人 |
都道府県 | 9,033.0人 | (前年) 8,244.5人 |
市町村 | 2万8,978.0人 | (前年) 2万7,145.5人 |
教育委員会 | 1万3,477.5人 | (前年) 1万2,607.5人 |
雇用障害者数はいずれも対前年で上回っています。
◆実雇用率
国 | 2.31% | (前年)1.22% |
都道府県 | 2.61% | (前年)2.44% |
市町村 | 2.41% | (前年)2.38% |
教育委員会 | 1.89% | (前年)1.90% |
※法定雇用率は2.5%、都道府県などの教育委員会は2.4%
独立行政法人など
雇用障害者数 | 1万1,612.0人 | (前年) 1万1,010.0人 |
実雇用率 | 2.63% | (前年)2.54% |
雇用障害者数及び実雇用率のいずれも対前年で上回っています。
※法定雇用率2.5%
今月公表される見込みの令和2年の「障害者雇用状況の集計結果」についても気になるところです。
引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000580481.pdf
障害者雇用納付金制度
障害者を雇用するためには、作業施設や作業設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理等が必要となるために、健常者の雇用に比べて一定の経済的負担を伴うことから、障害者を多く雇用している事業主の経済的負担を軽減し、事業主間の負担の公平を図りつつ、障害者雇用の水準を高めることを目的として 「障害者雇用納付金制度」が設けられています。
引用元:厚生労働省 HP
具体的には、雇用率未達成企業(常用労働者100人超)から障害者雇用納付金を徴収します。
一方で雇用率達成企業(常用労働者100人超)には、障害者雇用調整金を支給します。
その金額内訳は以下のとおりです。
◆障害者雇用納付金…5万円(不足1人当たり月額)
※常用労働者100人超の企業から徴収し、100人以下の中小企業からは徴収しない。
◆障害者雇用調整金…2万7千円(超過1人当たり月額)
※常用労働者100人超の企業に対して支給する。
その他、報奨金や特例調整金、また特例報奨金といった制度もあります。
まとめ
企業としては、障害者雇用に際して大なり小なり一定の障壁があると思います。
そのため、障害者雇用納付金や障害者雇用調整金といった制度を設けることで、障害者雇用を促進することは国として適切な施策だと思います。
ですが、上記の「障害者雇用状況の集計結果」にあるとおり、まずは国がその法定雇用率を達成してほしいですね。
「実雇用率2.31%<法定雇用率2.5%」なので…。
実態として法定雇用率の達成が非常に難しいことなのかもしれませんが、標榜している以上、率先垂範が求められるのではないかと思います。
障害者雇用は一企業(組織)の社会的責務として認識しておくべきですね。