本日の各新聞等にて「児童手当」の一部廃止案が大きく取り上げられています。
水面下にて今回の廃止案について調整が行われていたようですが、今回、その廃止案の制度設計が明らかにされています。
直接関係するような子育て世代の他、社会人としても知っておくべき事柄だと思いますので、整理してポイントをまとめてみました。
FPや社労士として触れる部分もありますので。
ご参考にどうぞ!
児童手当とは?
概要を以下にてまとめました。
受給資格者
◆中学校卒業(15歳の誕生日後の最初の3月31日)までの児童を養育している方。
- 父母がともに児童を養育している場合は、原則として、恒常的に所得の高い方(主たる生計者)が、児童手当の受給資格者になります。
- 児童が日本国内に住んでいる場合に支給します。
- 父母が離婚協議中などにより別居している場合は、児童と同居している方に優先的に支給します。
- 児童養護施設等に入所している児童については、施設の設置者等に支給します。
- 公務員の方は、勤務先から支給されます。
支給額
支給額は、「対象となる児童の年齢や人数」「請求者の所得」等により決定します。
対象となる児童の年齢等 | 児童手当の額(一人当たり月額) |
3歳未満(3歳の誕生日の属する月まで) | 15,000円 |
3歳~小学生(第1子,第2子) | 10,000円 |
3歳~小学生(第3子以降※) | 15,000円 |
中学生 | 10,000円 |
所得制限限度額以上の方(特例給付) | 5,000円 |
※「第3子以降」とは、18歳の誕生日後の最初の3月31日までの養育している児童のうち、3番目以降の児童をいいます。
所得制限限度額
父母等の世帯合算所得ではなく、受給資格者と配偶者それぞれ単独の所得で判定します。そして、所得の高い方が受給資格者となります。
◆所得制限限度額
扶養親族等の人数 | 所得制限限度額 | 収入額の目安(控除前) |
0人 | 622万円 | 833.3万円 |
1人 | 660万円 | 875.6万円 |
2人 | 698万円 | 917.8万円 |
3人 | 736万円 | 960.0万円 |
4人 | 774万円 | 1002.1万円 |
5人 | 812万円 | 1042.1万円 |
※「収入額の目安」は、給与収入のみで計算しているおおよその額です。
※扶養親族の中に所得税法に規定する同一生計配偶者(70歳以上の者に限る)または老人扶養親族があるときは、1人につき6万円を所得制限限度額に加算します。
※審査対象所得の計算方法
「審査対象所得」 = 所得額 - 控除額 - 8万円
- 審査対象所得が所得制限限度額より低い場合、児童手当の対象となります。
- 審査対象所得が所得制限限度額以上の場合、特例給付の対象となります。
特例給付
児童を養育している方(受給資格者)の所得が上記の額(所得制限限度額)以上の場合、法律の附則に基づく特例給付(児童1人当たり月額一律5,000円)を支給します。
支給時期
原則として、年3回の2月、6月、10月の10日に、それぞれの前月分までの手当を支給します。
※原則、請求を行った月の翌月分からの手当が支給されます。
※請求が遅れると、遅れた月分の手当を受けられなくなります。
※「当分の間」の措置として支給。
現況届
現況届は、毎年6月1日の状況を把握し、6月分以降の児童手当等を引き続き受ける要件(児童の監督や保護、生計同一関係など)を満たしているかどうかを確認するためのものです。
提出がない場合には、6月分以降の児童手当が受給できなくなる点は注意ですね。
補足
2018年度においては、1,660万人が児童手当の支給対象であり、そのうち、約100万人が高所得者世帯向けの給付になっています。
一部廃止案
「高所得者世帯」向けの給付(特例給付)の一部廃止案が進められています。
この「高所得者世帯」の定義とは以下のとおりです。
つまりは、上記にて触れた所得制限限度額を超える収入世帯である「特例給付の5,000円」受給層の一部が適用外になるということです。
具体的には、上記のとおり、父母どちらか(主たる生計者)の年収が1,200万円以上になれば、扶養親族等の人数に関わらず、児童手当は一律ゼロになります。
ですが、それに該当しない所得制限限度額を超える収入世帯は引続き、「特例給付の5,000円」が支給されます。
なお、特例給付自体は存続するため、一部廃止案としています。
今回の案により、受給対象者が約61万人外れることになる見込みです。
その結果として、約370億円が捻出でき、それを待機児童対策に充てることで、2024年度までに14万人分の保育施設を整備するとの算段になっています。
また、今回の案は2022年10月メドでの実施を目指しているようです。
所感
今回の児童手当の一部廃止案について、個人的には反対ですね。
消費税増税や社会保険料等の負担が増加しているなかで、給付は減っていくという変更に非常に抵抗感があります。
致し方ない面もあることは重々承知していますが。
ですが、まずは優先して削減すべきことがあるのではないかと疑問に思う政策が多々ありますので。
そういった点からは、本当に全体最適で各施策を考えているのか疑わしいですね。
この辺りは、政治の難しさというか闇深さです…。
今回の一部廃止案は「年収1,200万円以上の高所得者世帯」ではあるものの、そのような世帯においても将来を担っていく子ども(子育て)には大なり小なり一律でお金はかかります。
また、長きにわたって出生率の低水位が嘆かわしい社会問題として取り上げられているさなか、その子ども(子育て)に資する支給を一部廃止することによる負の側面はそれなりに大きいのではないかないかと考えます。
代替として充てられる待機児童対策費は別途調達すべきだと思う面もありますので。
今回の一部廃止案の対象である特例給付が「当分の間」の支給としていた点(制度設計)は、今となれば、廃止しやすい土壌にあったと言えますね。
直接的に関係ない方でも、今回の一部廃止案については関心を持ってほしいです。
現政権が実行しようとしている施策ですので。