日本では毎年2月頃から春闘が行われます。
コロナ禍による業績悪化のあおりを受けて、すでにベアを実施しないと表明した企業も出てきています。
全体的に雇用環境も悪化基調にありますし、実質賃金も引き続き低下基調にあることを踏まえれば、当然と言えば当然ですが。
そのため、今年度の春闘においては、ベアを実施する企業はほとんどなさそうな気がしています。
そのほか、コロナ禍が続けば続くほど、企業業績の悪化による賃金減少が続き、それが消費者マインドの低迷につながることが見込まれます。
その影響を受けて、毎年7月末を目安に公表される最低賃金にも悪い流れが波及しそうですね…。
そこで今回は、賃金関係の規定として毎年見直しの際にも話題となる最低賃金とその推移についてポイントをまとめました。
ご参考にどうぞ!
最低賃金とは
最低賃金法に基づき、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額を定めて制度になります。
なお、労使双方の合意の上、最低賃金額より低い賃金で契約したとしてもそれは無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます。
最低賃金の種類
最低賃金には以下のとおり2種類あります。
地域別最低賃金
産業や職種にかかわらず、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者に一律して適用される最低賃金になります。
各都道府県に1つずつであるため、47件あります。
特定(産業別)最低賃金
特定の産業に従事する労働者を対象に定められた最低賃金になります。
令和2年9月1日時点で、228件の最低賃金が定められています。
留意点
①「特定(産業別)最低賃金」は「地域別最低賃金」よりも高い賃金水準で定められています。
②「特定(産業別)最低賃金」と「地域別最低賃金」の両方が同時に適用される労働者には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。
最低賃金の決め方
賃金の実態調査結果などの各種統計資料を参考に「最低賃金審議会」で決定しています。
地域別最低賃金の決定基準
以下の3点を総合的に勘案して定められています。
- 労働者の生計費
- 労働者の賃金
- 通常の事業の賃金支払能力
なお、「労働者の生計費」については、生活保護に係る施策との整合性に配慮することとされています。
特定(産業別)最低賃金の決定フロー
関係労使の申出に基づき、最低賃金審議会が必要と認めた場合、最低賃金審議会の調査審議を経て決定されます。
最低賃金が適用される労働者の範囲
地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。
特定(産業別)最低賃金は、特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその使用者に適用されます。
最低賃金の減額の特例
一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に認められているものになります。
最低賃金を一律適用することでの雇用機会を狭めるなどの不利益に対処する規定です。
具体的には以下の労働者が対象者とされています。
- 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
- 試の使用期間中の方
- 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
- 軽易な業務に従事する方
- 断続的労働に従事する方
最低賃金の対象となる賃金
毎月支払われる基本的な賃金が対象になります。
具体的には、実際に支払われる賃金から以下の賃金を除外したものになります。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
- 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
- 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
- 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
最低賃金の推移
◆直近5年推移(全国加重平均額)
平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | |
平均額(時間額) | 823円 | 848円 | 874円 | 901円 | 902円 |
上記のとおり、上昇基調にあります。
なお、直近の最低賃金では、東京都と神奈川県のみ1,000円超となっています。
東京都 1,013円
神奈川県 1,011円
最も低い最低賃金は「790円」となっており、九州や沖縄のほか、東北の一部の県がそれに該当しています。
地域間格差は「223円」と大きいため、地方から都市部への働き手の流出といった悪い流れが出来つつあります。
まとめ
最低賃金は上記のとおり、ここ数年は上昇基調にあります。
上昇基調にあることは良いことだと思いますが、消費税増税等の負担増に比しては伸び悩んでいることは明らかです…。
今年も引上げとなるのか、気になるところではあります。
最低賃金を上げるためには、まず第一に企業収益などの原資を十分かつ安定的に確保することが必要になります。
そのためにも、労働者サイドとしては生産性の向上を図ることで収益性アップに貢献するマインドを持つ同時に、それに即したアクションを起こしていきたいですね。
最低賃金は労務管理上において必ず押さえておくべき事項ですが、日本の足元の景気を示すひとつの指標でもあるため、引き続き要チェックです。